子育て
運動神経って何?
よく「運動神経が良い」とか、「運動音痴だから」などという言葉を聞くことがありますが、運動神経の良し悪しは遺伝で決まるのではなく、環境と運動への取り組み方によって伸びが違ってきます。
体格は遺伝による部分が大きいのですが、運動神経はトレーニングにより鍛えられます。
1 「運動神経が良い」とはどういうことをいうのでしょうか。
状況を目や耳などの五官(感覚受容器)で察知し、それを頭(中枢神経)で判断して、具体的に筋肉を動かすといった一連の流れをスムーズに行える、身体を巧みに動かす能力が優れていることを「運動神経が良い」と言い、スポーツ科学の世界では「コーディネーション能力(行動調整能力)が高い」と言います。ある刺激に対して、運動を起こすまでの時間が速く、目的に合わせた運動をスムーズに行える子どもは、この能力が優れていると考えられます。
子どもの運動能力が低下していると言われていますが、運動不足による筋力や柔軟性の低下だけではなく、コーデ
ィネーション能力の発達不足が問題視され始めています。
人間のからだの発達時期を示す「スキャモンの発達曲線」を見ると、神経系の発達は他の要素と比べて非常に早く6歳で85%くらいにまで達し、10歳の頃にはほぼ95%まで達しています。このことから、コーディネーション
能力のもととなる神経回路を発達させるトレーニングは10歳までが良いということが分かります。
2 「運動神経(コーディネーション能力)」を構成する7つの能力
① リズム能力 目や耳から入ったリズムに合わせて身体を動かす力
- ② 変換能力 状況の変化に合わせて素早く動きを切り替える力
- ③ 反応能力 合図に合わせて素早く反応し、適切に対応する力
- ④ 連結能力 からだの各部位を、無駄なくスムーズに動かす力
- ⑤ 定位能力 動いているものと自分との距離・位置関係を把握する力
- ⑥ 識別能力 手足の動きを調整し、道具を上手に操作する力
- ⑦ バランス能力 自分の重心を上手くコントロールし、崩れた体勢を素早く立て直しバランスを保つ力
50m走を例にとって考えてみましょう。
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① 合図(「位置について。用意、ドン!」)に合わせて素早くスタートを切る能力(反応能力)
② 手足をタイミングよく振る能力(リズム能力)
③ からだ全体を無駄なくスムーズに動かす能力(連結能力)
④ からだの軸を安定させて走る能力(バランス能力)
私たちは、50m走る中でも、上記のような様々な能力を同時に使っています。つまり、10歳までに十分なコーディネーション能力を獲得していないと、高いパフォーマンスは得られないと言えます。
生活をする上でもコーディネーション能力は重要です。「ふいに飛んできたボールがよけられない」「よく転び、転んだときにはうまく受け身が取れずにけがをする」といったことが多い子どもは、コーディネーション能力が低い(不十分である)かもしれません。
3 まずは、日常動作で「コーディネーション能力」を鍛えましょう。
日常の生活の中の動作でも、ひと工夫すればコーディネーション能力を鍛えることができます。ぜひ、今日から親子で取り組んでみましょう!
★フローリングの板目に沿って歩く。(バランス能力、定位能力)
板目からはみ出さないように一直線上を歩きましょう。綱渡りをするように、両手を広げてバランスを取りながら歩きます。
慣れてきたら、後ろ歩きでもチャレンジしてみましょう。普段は行わない動作
をすることで、崩れやすい体勢を整えるバランス能力や距離感を把握する定位
能力も向上します。
★歯磨きは利き手とは違う手を使って磨く。(リズム能力、識別能力、バランス能力)
普段使わない利き手とは反対の手を使うことで、動作の左右対称性が向上します。利き手とは違う手でもリズムよく磨けるように練習してみましょう。
さらに、慣れてきたら片足を上げて歯を磨く(右側の歯を磨いている時は左足を上げて、左側の歯を磨いている時は右足を上げて磨く)ことによりバランス能力も向上させましょう。
★立ったまま靴下をはく。(バランス能力、識別能力、巧緻能力)
片足でバランスを取りながら手指を巧みに使い、靴下をはきます。左右両方行います。慣れてきたら、靴をはく時にもチャレンジしてみましょう。